

もくじ
はじめに(連載の締めくくりとして)
これまで2回にわたり、インプラントとはどのような治療か、そして実際にインプラントを受ける際の流れについてご紹介してきました。今回の最終回では、インプラント治療を成功させ、長く快適に使い続けるために最も重要なテーマのひとつ、「インプラント周囲炎」について詳しくお話しします。インプラントは虫歯にならないという利点がありますが、その代わりに注意が必要なのが「周囲炎」。この病気は、発見が遅れるとインプラントが抜け落ちてしまうこともある深刻な問題です。しかし、適切なケアと早期の対応によって、予防・管理が可能な疾患でもあります。今回は、患者の皆さんにもわかりやすく、原因から予防法、治療、そして山浦歯科医院(以下、「当院」といいます。)での取り組みまでをお伝えします。
インプラント周囲炎とは?
インプラント周囲炎とは、インプラントの周囲にある歯茎や骨に起こる炎症性の病気です。天然歯と異なり、インプラントには神経がないため、違和感や痛みなどの自覚症状が出にくく、気づいたときには進行しているケースも少なくありません。この病気には二段階あります。初期段階である「インプラント周囲粘膜炎」では、炎症が歯茎に限局しています。ここでの適切な対処により、完全に健康な状態へと回復する可能性があります。一方、粘膜炎が進行して骨にまで影響が及ぶと「インプラント周囲炎」となり、骨の吸収が進行し、最悪の場合インプラントが脱落してしまうこともあります。
歯周病との関係性・歯周病のある人の注意点
インプラント周囲炎は、実は歯周病と非常に似たメカニズムで進行します。いずれもプラーク(歯垢)の中に存在する細菌が原因で起こる感染症であり、炎症を引き起こし、やがて歯やインプラントを支える骨にまで影響を及ぼします。
とくに注意が必要なのは、過去に歯周病にかかったことのある方です。歯周病の既往がある方は、そうでない方と比べてインプラント周囲炎にかかるリスクが明らかに高いことが、多くの研究で報告されています。つまり、インプラント治療を受ける際には、歯周病のコントロールが大前提なのです。また、歯周病と同様に、インプラント周囲炎も"慢性進行性"の病気であるため、毎日のセルフケアと定期的なプロフェッショナルケアが必要不可欠です。
インプラント周囲炎の主な原因
プラーク・歯石の蓄積 インプラントの周囲に磨き残しがあると、細菌が繁殖しやすくなり、炎症を引き起こします。天然歯よりも清掃が難しいため、専用のケア方法が必要です。
喫 煙 喫煙は血管を収縮させ、歯茎への血流を低下させることで、炎症の治癒を妨げます。また、免疫力を低下させ、細菌感染に対する抵抗力も弱まります。
糖尿病 血糖値が不安定な方は、感染に対する抵抗力が低く、インプラント周囲炎のリスクが高まります。
歯ぎしり・くいしばり インプラントに過度な力が加わると、周囲の骨に負荷がかかり、炎症を助長する要因となります。
医原性要因 インプラントの埋入位置が不適切であったり、補綴物(人工歯)の設計が悪いと、清掃性が悪くなり炎症を起こしやすくなります。噛み合わせの調整も重要です。
医原性の問題は、実はインプラント周囲炎において特に重大です。なかでも「埋入ポジション」が適切でない場合、補綴物のデザインに大きな制約が生まれ、清掃不良や噛み合わせの異常が発生しやすくなります。さらに厄介なのは、一度インプラントを埋めた位置は"あとから変更できない"という点です。つまり、不適切な位置に埋入されてしまったインプラントとは、ずっとそのトラブルを抱えてつき合っていくしかないのです。このような医原性トラブルは、治療の質と長期予後に直結します。
症状と早期発見の重要性
インプラント周囲炎は、初期には自覚症状が少ないため、定期検診がとても重要になります。以下のような症状が見られた場合には、早めに歯科医院を受診しましょう!特に、インプラントの動揺や膿が出る段階では、かなり進行している可能性があります。定期的なレントゲン撮影による骨の状態チェックも、進行を見逃さないために重要です。
インプラント周囲炎の治療方法(軽度〜重度まで)
インプラント周囲炎の治療は、炎症の程度によって内容が異なります。
重度になると、インプラントの撤去を余儀なくされることもあります。だからこそ、早期発見・早期治療が非常に重要なのです。
再発を防ぐためのメンテナンスの重要性
インプラント治療は、「入れたら終わり」ではなく、「入れてからがスタート」です。インプラントは天然歯と異なり、自然治癒力が働きにくいため、定期的なメンテナンスが不可欠です。メンテナンスでは以下のことを行います。
当院では、専門知識をもった歯科衛生士が、手術用顕微鏡(マイクロスコープ)を使用し、インプラント周囲の状態を徹底的にチェック・清掃しています。肉眼では見逃してしまうような細かなプラークや炎症兆候も、拡大視野下で確実に確認できるため、非常に精密で安全なメンテナンスが可能です。患者さまにとって安心・信頼できる環境を提供できるよう、万全の体制でサポートしています。
当院での取り組み
近年では、歯周病治療が不十分なままインプラント治療が行われるケースも散見されます。とくに保険診療の範囲では、歯周治療の専門的な教育を受けていない歯科衛生士が対応することもあり、結果として歯周病が十分に治っていない状態でインプラントが行われてしまうことがあります。
当院では、すべての歯周治療において、歯周治療の専門的な研鑽を積んだ歯科医師が責任を持って治療を行っています。これにより、インプラント治療の前提となる歯周組織の健康状態をしっかりと整えることができ、その後のインプラント周囲炎のリスクも大幅に低減されます。
当院では、インプラント治療を行う前に、必ず歯周病のスクリーニングを行い、必要に応じて歯周基本治療を優先的に実施します。また、インプラント埋入時には、骨や歯茎の状態に応じて最適な位置・角度を選定し、補綴物も清掃性と噛み合わせを重視して設計しています。さらに、前回の連載でもご紹介したシンプラントによるガイドサージェリーを用いることで、術前に最適な埋入位置を三次元的に設計し、その位置に正確にインプラントを埋入しています。この方法により、埋入ポジションによるトラブルが起きるリスクを極限まで減らし、長期的な予後の安定性にもつながっています。
術後は、患者さま一人ひとりに合わせたメンテナンスプログラムを作成し、定期的なチェックとクリーニングを行っています。万が一インプラント周囲に炎症が見られた場合も、早期に対応することで重症化を防いでいます。
【まとめ】
インプラント治療は、失った歯を取り戻すだけでなく、食事や会話、笑顔といった日常生活の質を高める素晴らしい治療法です。しかし、その恩恵を長く享受するためには、治療後のケアがとても大切です。インプラント周囲炎は、適切な予防と早期発見により、十分に管理できる病気です。ぜひ定期的に歯科医院を受診し、インプラントとともに健康な口腔環境を保ちましょう。3回にわたるインプラントシリーズをお読みいただき、ありがとうございました。今後の治療やメンテナンスにお役立ていただければ幸いです。
山浦歯科医院 院長 山浦 泰明(本誌インプラント記事提供及び解説者)
INFORMATION
名称 | 山浦歯科医院 |
---|---|
住所 | 山梨県甲府市丸の内二丁目33-8 |
電話番号 | 055-222-2272 |
営業時間 | 月火水金土 9:00〜12:00 / 火金 14:00〜18:30 / 月水土 14:00〜17:30 |
定休日 | 休診日:木・日・祝日(祝日週の木曜日は診療致します) |
URL | https://www.yamaura-dc.jp/ |
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